「子供の矯正治療は何歳から始めるのがよいか」という質問に対する答えは矯正医によって異なります。子供から開始する矯正治療には二つの治療法があり、3期治療と2期治療です。
3期治療とは、第1期治療を乳歯列(生えているすべての歯が乳歯)、第2期治療を混合歯列(乳歯と永久歯が混ざって生えている)、第3期治療を(生えているすべての歯が永久歯)の各段階で矯正治療を行います。
2期治療とは、第1期治療を混合歯列(乳歯と永久歯が混ざって生えている)、第2期治療(生えているすべてに歯が永久歯)の各段階で矯正治療を行います。
当院では2期治療を行っています。3期治療を行わないのは矯正治療を24年行ってきて3期治療の価値を感じないからで、2期治療で十分に不正咬合に対応出来ると思います。
当院での2期治療の第1期治療の開始時期は、年齢ではなく永久歯の萌出状態で決めます。通常は上下左右の第一大臼歯4本、上下前歯6~8本が萌出している状態で、年齢では大体8歳~9歳です。
「子供から矯正治療を開始する理由は?」と言えば、成長期でないと治らない状態の改善を行う、永久歯列での第2期治療で歯を抜かずに治療が行える可能性が高い、歯を抜く本数を少なく出来る、たとえ歯を抜くことになっても永久歯列から治療を開始するより良い状態に治すことが出来る、永久歯列での治療(ブラケット)が不要になる可能性がある事です。
また単純な装置での第1期治療を行うことによって、複雑で虫歯になりやすい装置(ブラケット)の第2期治療の治療期間を短く出来ます。
他の治療法として、子供の矯正治療は行わずに永久歯がすべて生え揃ってから、4本の抜歯、6本の抜歯、外科手術を選択する矯正医もいらっしゃいます。
基本的には上顎前突(出っ歯)を改善する装置で、上顎(上あご)の成長抑制または上顎の第一大臼歯(6歳臼歯)を後方に移動する装置で「出っ歯」「ガタガタ」の改善を行う為に、1日9~10時間の装着で1~2年使用します。基本的には就寝時に使用し、1日の合計の使用時間が9~10時間で、連続の装着でなくても問題はありません。
多種の使用法がありますが、当院では上顎前突(出っ歯)の患者様に使用しています。
重度の上顎前突では、下口唇が上顎前歯の裏側に入り、上顎前歯を前方に押し出します。その状態で時間の経過と共に上顎前歯が前方に突出するのを抑制または改善します。
最低1日1時間、口唇を閉じて装着し、6カ月~1年使用します。
ブルー(柔らかい)、オレンジ(硬い)の2種類を使用していますが、ブルーから開始して必要があればオレンジを使用します。
上顎前歯を前方に移動して、反対咬合を改善する装置です。
受け口で上顎前歯が下顎前歯によって後方に押し込まれている場合、咬合を挙上して後に押し込まれている上顎前歯を解放し、前方に押し出して反対咬合を改善します。
使用期間は6か月~1年です。
「前方」または「側方」に歯を動かす装置で、診察時にはずして調整します。装着期間は治療内容によって異なりますが、1年~3年装着します。
歯や顎を固定する装置で、下顎に装着して、大きな乳歯(E)が抜けて乳歯より小さい永久歯(第二小臼歯)萌出した時に3ミリ程の空隙が出来て、その空隙に第一大臼歯が移動して空隙が無くならない様にし、空隙を残します。
骨格性の下顎前突では、下あごが上あごより幅が広く成長するので、成長で下あごが大きくならない様に固定し、2~3年の装着。
上記のリンガルアーチに比べ、線が細くて弾力性があり、あごを広げたり、第1大臼歯を後ろに移動したり、前歯を前方に移動する装置です。
骨格性下顎前突を改善する装置で、上顎を前方に牽引します。
1日9~10時間の装着で、1~2年使用します。
基本的には就寝時に使用し、1日の合計の使用時間が9~10時間で連続の装着でなくても問題はありません。
あご(歯槽骨)を広げる装置で、小さなあごを広げることによって「ガタガタ」の改善を行います。患者様自身で取り外しが可能なので、虫歯になりにくい装置ですが装着時間が短いとあごが広がりません。装着時間は1日24時間ですが、歯磨き、食事、運動時、学校の授業で装着する事により問題が出る場合にははずしてもらっています。6か月~1年程使用します。
歯を固定する装置で、下顎に装着して、大きな乳歯(E)が抜けて乳歯より小さな永久歯(第二小臼歯)萌出した時に3ミリ程の空隙が出来、その空隙に第一大臼歯が移動して空隙が無くならない様にしてガタガタを並べる空隙を確保する装置で、6か月~1年の装着。
上記のリンガルアーチに比べ、線が細くて弾力性があり、あごを広げて叢生を改善したり、前歯を前方に移動する装置です。
上あごの骨を広げる装置で、上あごは左右の骨が中心で縫合しますが、成長期では縫合部を離開でき、骨を広げる事が出来ます。永久歯の萌出後に装着し、2~4週間スクリューを1日1回転させて骨を広げ、その後に新しい骨が出来るまで約6か月間固定します。
治療前
治療後
舌の位置が悪い、嚥下(飲み込む)時に舌を上下の歯の間にはさむ癖があると開口になります。舌癖は8歳前後に治療を開始すれば治り易いのですが、治療の開始時期が遅れると治療期間が長くて治りにくくなり、舌癖により骨の変形が起こります。成人の場合は手術が必要になることがあります。
この装置は1か月に1回ははずして当院で清掃をしないと、歯肉が腫れて使用できなくなります。
舌癖の改善は難しい治療のひとつです。
装着期間は通常は1~2年ですが、癖の改善が困難な患者様は3年程装着します。
上顎の幅は舌によって広げられています。舌癖の場合は舌が本来の位置より下がっていて、この状態が一定期間続くと上顎の幅が狭くなります。狭くなっている上顎を拡大して舌の入る幅を作ります。
3か月~6か月ほどの装着で上顎が広がります。